石巻競馬関連資料集
 └新聞記事:大正7年(1918年)

「石卷競馬大會」(『河北新報』9月11日)

産馬畜産組合主催競馬大會は明十二、十三兩日に亘り牡鹿郡石の卷競馬塲に於て開催の筈にて馬政局より七百圓の補助交附あり今回は出塲馬数殊に多数にて四十七頭に達したりといえば定めし盛況を呈することとなるべく例に依つて勝馬投票等の餘興もあり人出多かるべき見込みなりと
「石卷競馬大會 『第一日』」(『河北新報』9月13日)

仙臺産馬畜産組合主催秋期大會の第一日は昨日午前十一時より牡鹿郡蛇田村なる石の卷競馬塲に於て擧行された此の日は朝から秋天高く晴渡り九時頃から薄霞が掛つたがそよ吹く風と心地よく絶好の競馬日和、昨年も一昨年も雨に悩まされた石の卷競馬會も今年ばかりは大丈分と町から三十町程の會塲に詰掛くる見物は引きも切らず開會前一時間の十時ど云ふに周圍半哩と云ふ會塲の外側はギツシリ黒山のやうな觀客に圍まれて其の數は一萬餘と註せられた仙臺産馬組合よりは小野寺副長中田技師吉岡委員列席し又岩淵牡鹿郡長大内蛇田村長遠藤蛇田競馬會長中山黒川競馬會長代理その他來賓百餘名頗る盛會であつた定刻十一時となるや鐘を合圖に第一回の競爭は始まつた出塲馬匹七頭何れも秋風に勇みに勇んで出發點に鼻を並べ身も輕げに馬上に跨つた騎手は必勝を期しつゝ鞭をならして馬を御する
午前中次ぎのやうな勝敗があつた
▽第一回 本縣産新馬競走(一哩)
 △一着ソウハル小野田村産騎手小關持主遠藤善藏△二着タカセウ中新田町産騎手本田持主高橋正七△三着コニシキ小野田村産騎手板木持主遠藤善藏
▽第二回 本縣産各馬競走(一哩)
 △第一着オリオン温泉村産騎手板木持主遠藤善藏△二着清龍廣原村産騎手伊藤持主熊谷市平△三着ミアサキ廣原村産騎手高倉持主黒須久四郎
▽第三回 内國産各馬競走一哩三分一
 △一着玉電温泉村産騎手高村持主渡邊善□△二着宮本小野田村産騎手伊藤持主熊谷市平△三着飛龍眞山村産騎手佐々木持主中鹽幸松
以上にて午前中の競走を終り一旦休憩し午後一時再開したが天候好晴にて空前の競馬日和なれば人出ますゝ加はり塲外立錐の餘地もなく實に一萬五千餘人の入塲と註せられ盛觀裡に午後三時半無事閉會した(石卷特派員發)
▽第四回 本縣新馬競走(四分三哩)
 △一着コニシキ騎手板木△二着玉錦御嶽村産騎手佐々木持主佐々木忠七△三着宮坂宮床村産騎手伊藤持主伊藤松治
▽第五回本縣産各馬競走(一哩)
 △一着玉電騎手高村△二着飛龍騎手佐々木△三着ミヤサキ騎手黒須
△第六競馬(九頭立て) 距離四分の三哩
 △第一着ローヤル(小野田村産)時間一分四十一秒五分の一騎手小關持主遠藤善藏(賞金二十五圓)△第二着カタヒョウ(中新田町産)騎手本田持主高橋庄七(賞金十圓)△宮坂(宮床村産)騎手伊藤持主伊藤松治(賞金五圓)
△第七競馬(七頭立て) 距離二分ノ一哩
 △第一着ヤング、ローヤル(一栗村産)時間一分二秒四五ノ二騎手川村持主川村勇(賞金十五圓)△第二着ゼヒツト(宮崎村産)騎手佐々木持主大沼慶之助(賞金五圓)△第三着サーチ、ヤング(鬼首産)騎手板木持主高梨壽三郎(賞金三圓)

「石卷競馬大會 『第二日』」(『河北新報』9月14日)

石の卷競馬大會の第二日は十三日午前十一時より前日通り蛇田村の馬塲に於て開催された、朝の空には怪しげな黒雲が徂徠し且西風さへ強かつたので如何がと危まれたが十時頃になると
▽黒雲が東に 流れて絶好の競馬日和となり果てはヂリゝと照りつけたために額には玉のやうな汗がにじみ出る程になつた、觀衆は開會時刻が十一時といふので前日より集合が幾分遅れたやうでも定刻には既に一萬餘とあつて塲の内外には恰も黒蟻の如くに蝟集した、緞ダラ染の幔幕や各商店の商標を現した彩旗やが心地よく吹渡る
▽秋風に翻つて 何ともいはれぬ快感を與へる一方本日の最終には一等賞金百圓の優勝馬競走が控へて居るので、騎手も持主も一般觀客も緊張した氣分に滿ちゝて居る、やがて十時半となれば第一回の競走に出塲する新馬九頭が油ぎつた勢ひを戞々たる蹄の音に表徴し鬣を秋風に振り立てゝ天馬の慨を示し馬丁に曳かれて塲にはいると思いゝの意匠を凝らした派手造りな乗馬服に身を固めた各騎手は各自信ありげな
▽微笑を唇邉に 漂はし馬匹の檢査が終つて乗馬の號令一下するやヒラリとばかりに馬上の人となり數回輪乗りをかけて塲馴を試みる、定刻に近づくと出發點に集まるのだがドツスリ落着く馬、意氣り立つて静まらぬ馬、何せよ出發點で一歩おくれば必勝點で百歩の差となるから各馬ともに氣を焦ら立つも無理がない、これを乗り静めやうとする
▽騎士の苦心 も並大抵ではないらしい、その内に偶然十匹の馬頭が一線に揃ふたかと見れば出發合圖の旗がサツと切られた時は正に十一時どつと擧つた、觀衆の喊聲に送迎されて十頭の逸馬は勢ひ鋭く秋風を切つて突進する、最初より先頭の位置を占めた『コニシキ』はよく先進の榮を全ふして遂に
▽七馬身の差 を以て第一着の榮位を得た觀客はまた天地を動揺めかすやうな喊聲をあげたその結果は左の如くであつた
▽一回 本縣産新馬競走四分の三哩(十頭)
 △一等 コニシキ(二十五圓)一分三十九秒五分の一小野田村産騎手松木持主遠藤善藏△二等 タカセウ(十圓)中新田町産騎手本田持主高橋正七△三等 末花(五圓)宮崎村産騎手伊藤持主末永常吉
▽二回内國産各馬競走 一哩(七頭)
 △一等 清龍(二分五秒五分の一)騎手伊藤(清)持主佐々木清之助△二等 宮本騎手伊藤(啓)持主伊藤市平△三等 ミヤサキ騎手高村持主黒須久四郎(賞金同前)
▽第三競走四分の三哩(九頭)
 △第一着ヤングローヤル騎手河村持主河村勇△第二着末花騎手伊藤啓持主末永忠吉△第三着宮坂騎手伊藤松持主伊藤□治
右終りて十二時休憩後一時半再會
▽第四競馬)本縣産三才駒) 二分ノ一哩
 △第一着 レヘツト騎兵河村持主大沼慶之助△第二着高駒騎手古關持主齋藤政吉△第三着ハナビシ騎手伊藤松持主本木
▽第五競走(無恤競走) 四分三哩
 △第一着愛宕山騎手伊藤清持主佐藤利兵衛△第二着朝日騎手高村持主本郷野耕△第三着颯々時雨騎手伊藤啓持主新田與一郎
▽第六競走(内地産牝馬) 一哩二分ノ一
 ▽第一着清龍(賞金七十圓)騎手伊藤松持主佐々木清之助△第二着玉竜(賞金二十圓)騎手高村持主渡邊友藏△第三着宮本(賞金十圓)騎手伊藤啓持主熊谷市平
いよゝ最後の本縣産牝馬一哩四分の三優勝戰となつた出塲馬はローヤル(騎手古關持主遠藤善藏)小錦(騎手杉本持主遠藤善藏)タカセウ(騎手本田持主高橋小七)玉錦(騎手伊藤松持主佐々木忠吉)の四頭にして第一第二は共に小野田村第三は中新田第四は御嶽村の産にして何れ
▽劣らぬ逸足 午後三時四十分出塲出發點に頭を揃へたのは四時十分前であつた出發合圖の赤旗がパツと下りると同時に駈け出した小錦が先頭を切りタカセウ玉錦が之れにつゞきローヤルは立ち遅れて十間ばかり後になつたタカセウは幾度か小錦の□を窺つたが及ばない立遅れたるローヤルは決勝點前四分の一哩の處にて
▽玉錦を抜 き更にタカセウをも駈け抜けんとせしも距離短く結局小錦が二分二十五秒五分の二にて約七馬身の差にて本會塲出塲四十五頭中最高の榮譽を擔へ賞金百圓を得たタカセウは二等で四十圓ローヤル三等で十五圓の賞金となつたが若しローヤルが出發點で立ち遅れとならなかつたら一層面白き勝負を見ることが出來たらうとて皆が
▽殘念がつて 居つた四時無事閉會を告げたが午後五時よりは石ノ卷競馬會が主催となり菊水に於て招待會を開き百餘名の來會者があつて非常に盛大な宴を催し十時頃散會したと(石卷特派員電話)