石巻競馬関連資料集
 └新聞記事:大正8年(1919年)

「公認競馬塲の新設には十萬圓は掛る 本縣の積立金はヤツト二萬餘圓」(『河北新報』8月24日)

本縣には馬事思想の發達、馬格の改良等に資する目的の下に産馬畜産組合が斡旋して二個の競馬塲が出來た、何れも
 半哩馬塲で理想的の馬塲として見ることは出來ぬ、一個は石ノ卷の蛇田競馬塲でこれは半哩馬塲の上に馬塲の間數が狭く競走中往々人馬が危殆に陥ることがある、他は黒川の吉岡競馬塲で蛇田の夫れよりも馬塲が完備して間數の如きも狭くて二十間廣くて二十五間の地域を占めて居るけれども交通が不便で馬産地方から集まるには多大の經費を要する、同時に馬事思想の普及促進上の効果が少い、當局は
 此の欠點ある馬塲を撤廢して新たに大規模の競馬塲を設けたいといふので種々計畫中だといふが、當事者の言ふところに依れば「組合が模範的の競馬塲を設けたいといふ希望を有つて居たのは今日に初まつたことでなく去る明治三十四年今上陛下が未だ東宮殿下に在せられし當時參謀演習御見学の爲め當市に行啓遊ばされた、その際
 宮城野原で競馬を台覽に供へたが折柄の降雨にも拘らせられず御台覽遊ばされた後組合に對して御下賜金があつた、それを基金として競馬塲設置に着手すべく敷地の選定や土地の買收等に取掛る一方縣からも一千圓の補助を受け仙臺市からも應分の醵金を得ていよゝゝ設立しようと幹部會に附議した結果
 設備費が充實してから徐に設置した方が寧ろ理想に近い馬塲を設ける事が出來るといふことに一致して御下賜金その他から得た利金その他を管理してるがその總額二万三千餘圓を算して居る、然し今日では少くとも十万圓もなければ一哩馬塲としての公認競馬塲を設置することが出來ぬ、本縣産馬頭數では誇ることは不能だが
 優良馬の簇出する點に於いて全國有數であるから當業者もますゝゝ斯業の改進を期すべく努力してる折柄福島に亜ぐ公認競馬塲を仙臺市に設置しなければならぬと思ふ夫れには縣市當局と市民の發奮に俟たなければ駄目である」

「石卷競馬大會 來月六、七日」(『河北新報』8月24日)

仙臺産馬畜産組合主催に係る秋季競馬大會は來月六、七の二日間に亘り石の卷町なる蛇田競馬塲に於て擧行する筈にて同組合は馬政局に對して補助金(七百圓)の交付を申請したる一方各種の準備に忙殺されつゝあるが今回は特に馬産奬勵の目的を以て本縣産新馬競走優勝馬に金百圓、内國産新馬競走に金七十圓の賞を懸くるといへば該競走には自ら活氣横溢すべく回數は第一日七回、第二日七回、計十四回なりと

「石卷秋期競馬大會 第一日 蛇田原の壯觀」(『河北新報』9月7日)

仙台産馬組合主催の本年秋期競馬大會は六、七兩日にかけて牡鹿郡蛇田村なる石の卷競馬塲に於て擧行されたり同競馬塲にては豫て會長遠藤章平氏以下一同協力一致して馬塲その他の設備に盡力しつゝあり開設以來の經驗に依り秩序整然何れも間然する所なくいよゝゝ開催
 ▽第一日 となるや會塲の入口には歡迎の大緑門を設け審判役員來賓觀覽所出馬掛休憩掛等の随所に天幕を張り中央には大小數條の大旗綾をなし豊穣の蛇田原頭には早朝より觀覽人多數集り忽ちにして會塲の周圍に土手を續らしたり午前十一時となるや本縣産新馬第一競馬開始さる出塲馬數四頭騎馬の號令に次でサツと打振る合圖の旗に一齊にスタートを切つて駿足鐵蹄は
 ▽砂塵を蹴つて先を争ふて逸走す斯くと見たる觀衆は何れも赤よ白よと應援の聲を擧げ暫しは鳴りも止まず會塲一週の時サンザ勝號先頭にて次は米花號ゼベツトの順位なりしも次位なる米花號は元氣益壯にして漸次駿足を早めて第二回にはサンザ勝を一蹴して先頭となる是を見たる數万の觀衆は吾を忘れてサンザ勝號を絶叫するものと米花に聲援を與ふるの聲は耳を聾せんばかりなりしが遂に劈頭第一回の先着の
 ▽榮冠は米花號の有に歸せり午前中に三競馬をなし正午休憩午後又續行す而して本年の出塲馬匹は本縣内産新馬十九頭同古馬十頭縣外産新馬二頭同古馬一頭合計三十二頭にして當地競馬會は初期以來第五回なるも其間驚くべき馬匹の改良進歩を見本年の如き其の競争塲に立てる馬は何れも前年に比し頗る一見優良なるを覺わしめたり
 ▽七日には春藤内務部長及び安藤勸業課長は來觀する筈なり六日の競争の結果左の如し(蛇田特派員電話)
 ○午前の部
 第一回(本縣産新馬競争)第一着米花第三號、加藤兎吉、玉造郡温泉村
 第二回(本縣産各馬競争)第一着オリオン號、遠藤尚義、玉造郡温泉村
 第三回(内國産各馬競争)第一着宮本號、熊谷一平、栗原郡金田村
 ○午後の部
 第四回(本縣産新馬競争距離四分の三哩)第一着、ヤングロール號、氏家七三郎玉造郡一栗村
 第五回(本縣産各馬競争距離一哩)第一着、リヤール、高橋壽三郎、加美郡小野田村
 第六回(本縣産新馬競争距離四分の三哩)第一着、第三米花號加藤兎吉玉造郡温泉村
右の如くにて六日午後三時十五分を以て終了したるが七日は午前十一時より六日同様擧行すべし(蛇田特派員電話)

「石卷秋季競馬大會 第二日 前日に劣らぬ盛況」(『河北新報』9月8日)

石の卷競馬會第二日は七日午前十一時より擧行されたるがこの日朝來秋空高く澄み渡り風稍強かりしも絶好の競馬日和にて前日に劣らぬ盛況を呈せり午後一時までの結果左の如し
 ▽第一競馬(本縣産新馬競争)第一着 さんさ勝號加美郡小野田村騎手新田正二△第二競馬(内國産各馬競争)第一着 米花號本吉郡御嶽村産騎手畑山静夫
 ▽第三競馬(本縣産新馬競争)第一着 ゴールデンスター號加美郡宮崎村産騎手佐藤源藏 正午休憩午後一時四十分より再開せる結果左の如し
 ▽第四(撫恤競争)第一着第三舞子號、北海道産、佐藤亀三郎出品
 ▽第五(内国産第一第二各馬優勝競馬)第一着こにしき號、小野田村産、遠藤尚義出品
右終つて當日の呼物たる優勝競馬に移り熱血せる觀衆の拍手應援聲裡に各競争馬騎手共静々と出塲し何れも全力を傾注して奮闘せるがその結果今回競馬の月桂冠は第三米花號の占むる所となり無事二日間に亘る大競馬會は終了す時に午後三時四十分
 ▽第一着 第三米花號
       騎手 伊藤松四郎
 ▽第二着 ヤングロール號
       騎手 川村 一男
 ▽第三着 サンサ勝號
       騎手 鍋澤榮太郎
      (蛇田特派員電話)