石巻競馬関連資料集
 └新聞記事:昭和30年(1955年)

「平日開催禁止の波紋 地方競馬にも打撃 各地での混乱も予想」(『石卷新聞』1月14日)

政府は十一日の閣議で「競馬・競輪を平日には開催しないこと」と基本方針をきめ“不健全娯楽を行政措置で抑制する方針”も併せ決定した。これは競馬、競輪などが平日にも行われている現状は“不健全”だとしその抑制に出たものであるが、何せこれが今春四月から実施されれば地方財政にも影響を予想されるので、公営競馬開催都市はとくに重大な関心を払つている。石巻市の場合は昭和二十六年秋から市営競馬を開催、現在まで春秋二回ずつ合計七回を催し毎回県内県外馬百頭が出場、馬券売り上げ高は一回四百万円から同最高五百五十万円にのぼつている。こんどの閣議決定に対し従つて石巻市も重大関心をよせているが、市営競馬所管の佐藤市農林課長は十三日「こんどの閣議決定は競馬の何ものかを全く知らぬものだ」と強い反対意向を次のとおり語つた。
▽佐藤農林課長談=競馬開催を祝祭日、土、日曜のみとし平日は禁止するというが、もしそうなれば各地の競馬はカチ合い、馬や馬主の滞在手当はかさみ、大変なことになる。県内では石巻と仙台の二カ所、東北七県では十二カ所で毎年計三十二回の競馬が催されているが、平日のみ開催となれば出場馬の確保や開催時期などで混乱は免れまい。競馬は射倖心をそそる不健全娯楽という話だが決してそうではない。馬産奨励にはなるしむしろ健全とさえいえよう。こんどの閣議決定は競馬の何たるかを知らぬ人たちの話だ

「市の財政當局の意向は むしろ廢止に賛成」
競馬の平日開催禁止問題につき石巻市の場合は可否両論がある過去七回の市営競馬の実績は大半が赤字のため石巻市の財政当局はむしろ廃止賛成の表情、これに対し市農林課競馬会関係者はこんどの政府方針に対し強い反対意向を表明して成行を重視している。二十六年十月いらい過去六回の石巻市営競馬は一回だけ三十万円の黒字を出しただけで年合計では全くの赤字連続だつたという

「中止存續か 競馬委協議」」(『石巻日日新聞』2月23日)

既報、土日、祭日以外の催しを中止する政府の方針で重大な岐路にたつた石巻市営競馬について二十三日午後一時より市役所で從来通り市営でやるか、それとも中止するかーの方針を決める重大な競馬委員会が開かれる。石巻市の場合過去の実績から見て平日も開場しない場合完全な赤字となり、赤字を承知で今後も催し得るかどうかーの結論は待つまでも無いが、若し今後行わないとした場合今迄数百万円を投じて施設した設備を如何にするかが当日の大きな問題となる見込みである

「石卷市營競馬 中央の方針に對處」(『石卷新聞』2月24日)

政府が競馬の平日開催禁止方針を決めたことは毎年二回市営競馬を開催している石巻市にとつても重大な関連をもつので市は中央の出方を注目しているが、二十二日東京で開かれた全国公営競馬主催者協議会には、本県を代表して仙台市から出席した。石巻市はこの会議結果をきき中央の方針を見極めたうえ今春の市営競馬開催の細部を決定する
▽石巻市佐藤農林課長談=きのう(二十二日)東京で開催の全国公営競馬主催者協議会には仙台市から出席してもらつた。この会議で政府に対しいろいろな要望も提出され、政府も既定方針をある程度再検討するとみられるが、石巻市の場合もこの会議結果を待つて競馬委員会を開き具体的な検討をしたい、市営春競馬は順当に行けば四月か五月になろう

「競馬委延期」(『石巻日日新聞』2月27日)

既報、二十三日開く予定だつた石巻市競馬委員会は無期延期となり、三月二日頃佐藤農林課長が上仙、去る二十二日の主催者協議会と東北七縣協議会の結果を聴取、其の後市の委員会を開き平日取り止めの市営競馬をどうするかを協議することになつた

「市営春競馬 日取り決定」(『石巻日日新聞』3月30日)

石巻市営競馬は二十八日の競馬委員会で存続と決定同時に今年の春競馬は5月と決り、開催日は土日曜のほか地方の祭典日が折り込まれた
春競馬開催日五月七、八、九日(十日〜十二日休み)十三、十四、十五日の延六日間、なお第二回競馬は七月か八月に実施の予定である

「地方競馬騎手免許試驗實施 石巻競馬場で」(『石巻日日新聞』4月15日)

縣では地方競馬騎手免許試験を二十二日午前十時より石巻市ヒバリ野競馬所で行う希望者は十八日まで縣畜産課宛に申請書、履歴書、身分証明書、および名刺判写真二枚と手数料百円を添え提出すること

「石卷競馬のポスター」(『石卷新聞』4月16日)

五月七、八、九、十三、十四、十五の六日間開催される三十年度第一回石巻市営競馬の宣伝ポスター(原画)ができあがつた。市では四月選挙終了後の五月二日ころから県内外に宣伝隊をくり出すが、とりあえず十五日から開幕の上の山競馬、二十九日からの水沢競馬に係員が出張、宣伝と出馬勧誘につとめることとなつた【写真】ことしの競馬ポスター


「縣内を巡回 石卷競馬宣傳」(『石卷新聞』4月28日)

石巻市では五月七日からはじまる春競馬の宣伝に乗り出しまず同月一、二の二日間は農林課員が今月二十九日から開催の岩手県水沢競馬に赴き、馬主、騎手の石巻出場を勧誘するが、三、四、五の三日間は県内移動宣伝班を編成、自動車に飾りつけをほどこして各地を巡回、開催七回通算の赤字三十五万円を今回で一挙に吹き飛ばす算段である、なお市の競馬開催要領による県内馬一頭についての出場手当や騎手手当は次のとおり(単位百円)
出場手当−市内、稲井、渡波(五)牡鹿郡、桃生郡(六)塩釜、登米、志田、遠田の一市三郡(一〇)旧中津山(八)仙台、宮城、黒川、栗原の一市三郡(一三)加美、玉造二郡(一五)柴田、名取同(一六)なお県外馬に対しては一頭につき二千円を交付する◇騎手手当−1.普通競走一着百円2.優勝と特別競走一着二百円、二着百円

「市営春競馬 7日開場式」(『石巻日日新聞』5月7日)

待望の石巻市営春競馬は七、八、九、十三、十四、十五日の六日間ヒバリ野競馬場で盛大に催されるが、初日の七日午前九時三十分より競馬場投票所前広場で関係者多数を招き開場式を行う

「明日から石卷春競馬」(『石卷新聞』5月7日)

石巻市営春競馬はいよいよ明七日から開幕するが、初日は十二レースを行う予定で地方宣伝も終えた市農林課では六日午後一時からヒバリ野競馬場に男女計百十二名の従事者全員を集めて事前練習を行つた

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「春競馬始まる」(『石卷新聞』5月8日)

石巻市営競馬第一日目のきよう七日は午前十時半から観衆約二千人を集めて十一レースを展開、心配された天候もまずはことなく日没まで山形、水沢方面からも参加した計六十九頭が息づまるセリ合いを演じ、好調のスタートをきつた【写真】疾走する競走馬


「市営競馬 初日に大穴 馬券売上げ好調」(『石巻日日新聞』5月10日)

連日好天に恵まれた石巻市営競馬は初日の七日来、馬券の売上げは好調で二日間の売上げ一三〇万一一〇〇円(七日四六万九五〇〇円、八日八三万一六〇〇円)は昨年の一一六万一五〇〇円(初日五六万四四〇〇円、二日目五九万七一〇〇円)と比べ十一万一五〇〇円も多いため主催者側は喜んでいる
今回の出場馬は、七六頭で例年より少いが、好レースを展開、初日の七レース(一二〇〇米平地)で二八〇〇円、九レース(一六〇〇米平地)では実に一万五一三〇円の大穴が出てフアンを熱狂させ、二日目は二レース(二〇〇〇米速歩)で四四二〇円、十レース(二八〇〇米速歩)で二〇七〇円といづれも連勝式のダイゴ味を横溢させ、詰めかけた三千余の観客を興奮させた、三日目は九、十レースに特別レース(一、二番馬)が入り後半の十三、四、五の三日間は愈々特別レースや記念レースが豊富に折り込まれ好レースの展開が期待されている
尚今回は比較的商売人(専問家)の入りは少くほとんど県内馬産地の人々や地元の人によつて占められている、又二日目の八日第一レースで転倒した馬が出たが幸い人馬とも異状なかつた

「一万圓の大アナ 賑う石卷競馬」(『石卷新聞』5月10日)

七日から開幕した石巻市営春競馬二日目の日曜日は五月晴れの好天に恵まれ約一千五百人の人出でにぎわい馬券売上高も初日の四十六万九千五百円を倍近くも上回る計八十三万一千六百円を記録した、この二日間の“アナ”は初日第九レース平地一千六百メートル連勝で一万五千百三十円が飛出して場内をわかせ、また単では第十一レース平地一千四百メートルが一千九十円、二日目は第二レース速歩二千メートル連で四千四百二十円の“中アナ”という案配でパチンコ・プロから転業?したと思われる中年男やら小遣銭稼ぎに現われたサラリーマンなど日没まで一喜一憂の相も変らぬ競馬風景をみせてにぎわつた、なお昨年十月競馬の際の馬券売上高は初日五十六万四千四百円、二日目八十六万六千七百円、三日目四十九万五千円となつている
市営競馬三日目の九日は午後二時二十分現在までに次の“大アナ”二つが飛び出し観衆をわかせた

「三日目競馬 アナ続出 好天に大盛況」(『石巻日日新聞』5月11日)

石巻市営ヒバリノ競馬は九日で第三日目を迎えたが好天に恵まれて人気大いにわき盛況を呈した、この日第二レース速歩二〇〇〇米に一二二六〇円の大あな、また第四レース速歩二二〇〇米に一六九八〇円の大アナが出て場内を沸とうさせた

「市営春競馬 十三日再開」(『石巻日日新聞』5月13日)

石巻市営競馬後半は十三日から三日間にわたり再開されるが、当日降雨で無い限り曇天でも煙火を合図に挙行される

「馬券売上げ匹三二万円 市營競馬赤字か」(『石巻日日新聞』5月17日)

石巻市営競馬は五日目の十四日八七万六千百円、十五日一〇六万八千二百円と尻上りの好調な売上げで總計四三二万七千円となつた、併し今回も赤字が憂慮され決算結果に注目されて居るが二十九年度が三十四万円の赤字を出しているため漸く競馬廃止の声が高まつて来ている

「売上予想を下廻る 低調だつた石卷春競馬」(『石卷新聞』5月17日)

石巻市営春競馬は予定の六日間を十五日で終了したが、馬券売上高は目標四百五十万円を約十八万円下回る計四百三十二万七千円に止まり、人件費、諸経費差引きトントンの成績となつた、内訳は七日からの前半三日間が百八十三万一千七百円、十三日からの後半が二百四十九万五千三百円となつているが、期待されていた最終日の日曜はあいにくと朝の霧雨模様にわざわいされて思つたほどの出足はなく係員をガツカリさせた、期間中を通じての“大アナ”は第四日目十一レースの二万九百六十円だつたが、翌五日目九レースではスタートがそろわず計五頭のうち四頭だけが疾走したので発馬係がやりなおしを宣告したことから観衆が騒ぎ出し、結局馬主騎手、主催者にフアン代表を加えて協議した結果、約二十分遅れてやりなおすという一幕もあつた

「市營競馬を再檢討 開催目的にそぐわず 石卷 秋競馬から中止か」(『石卷新聞』5月26日)

石巻市では二十九年度の市営競馬特別会計に生じた赤字三十八万九千五百五十九円を三十年度予算から繰上げ充用することとなり二十四日の市議会に提案、承認を得たが、この赤字をめぐり市営競馬を中止すべきか、続行すべきかで論議がおこり、少くも運営上に再検討の必要はあると市当局も言明、開始後四年目の石巻市営競馬にようやく批判の声が高まりはじめた。石巻市営競馬は昭和二十六年十月から開始されその後毎年春秋二回開催、この五月で第八回目を迎えたが、一回ごとの馬券売上げ高は四百万円台で、かつかつ赤字をくい止めてきた。ところが二十九年度は予想外の不振で、とくに春競馬が悪天候にたたられたので売上げは三百四十万円に止まり、結局三十八万余円の赤字となつた。もつとも二十八年秋には五百四十五万円という黒字も出しているが、今回の赤字出来を契機に「市営競馬是か否か」はようやく表面に打出された課題となつた。二十四日の市議会では論議のすえ結局同繰上充用を認めたが、この問題に関する質疑応答次のとおり
▽佐藤農林課長 二十九年度の市営競馬は七月、十月の二回開催したが第一回目が悪天候のため馬券売上げが減少、年間の収入合計は八百八十五万二千百四円、同支出合計九百二十四万千百六十三円となり三十八万九千余円の才入不足を生じた
▽大森議員 かりに三十年度春競馬の結果が赤字になつた場合どうするか、また赤字続きで市営競馬を中止となつた場合、バランスをどうとるか
▽窪田庶務課長 市長も競馬のあり方を早急に検討するといつている、かりに秋競馬から中止となつた場合そのアナは一般会計からの繰入れとなろう
▽高橋(正)議員 現在の市営競馬はその開催目的に合致した経営をしているのか、また今後の見透しいかん
▽佐藤農林課長 競馬法による開催目的はその収入で地方財政に寄与するという点にある、また地方の年中行事として地方振興も寄与できるわけだが当市の場合は遺憾ながら赤字で法定の目的にそい難い現状だ
▽高橋(正)議員 開催目的にそわない競馬を今後も継続して行くのか
▽富田助役 市営競馬は慎重に検討すると市長も語つている、ここで競馬を中止するかどうかはまだ決定の段階でない、いずれ競馬運営委や競馬会とも話し合つて善処したい

「市營競馬 日取決る」(『石巻日日新聞』8月2日)

赤字再建のため実施の危まれていた今年度第二回石巻競馬は来る八月二十七日から九月四日まで六日間行われることになり三回の石巻競馬運営委員会で正式日取りが決められる
石巻競馬の継続実施は先の春競馬の予想される成績が「赤字らしい」ところから議会筋でも「やめろ」の声が出、山内市長も赤字で一般財政に負担をかけるなら止めても…」と語つたことがあつたが、決算の結果四三二万円の売上げに対し損もなければ利益もないトントンだつたため、あたら多大や経費を投じた競馬場を放置するに忍びないし馬産奨励上有意義だーとする声もあつて第二階競馬開催に決つたもの、予定される期日は八月二十七日(土)二十八日(日)三十一日(送り盆)九月一日(木)三日(土)四日(日)の六日間で正式には三日の運営委員会で決められる

「市營競馬は6日間開催」(『石巻日日新聞』8月5日)

(既報)今年度第二回目の開催が危まれていた石巻市営競馬は予定通り実施と決り、三日午後二時半から開かれた競馬運営委員会で日取りが正式決定した
委員会は過去の第一回開催実績として1.出場馬平地二八頭、速歩四四頭、計七二頭 2.うち県外馬十二頭 3.収支は四三二万七千円の馬券売上げに対し一一六七円の黒字の旨報告され、第二回目の日取りについては今月二十七、二十八、三十一、九月一、三、四日の六日間が決つた、この席上長川助役は従来当競馬の実績は芳しくなく、市の財政再建整備が近く着手されるが今後については慎重に検討したい」との挨拶があつた
なお二十七日からの第二回競馬は石巻が終つて水沢、仙台が開かれる都合のよい日程のため早くも岩手県から出場申込みがあるなど県外馬の多数出場が確実となつている

「石卷夏競馬 予定通り開催」(『石卷新聞』8月5日)

石巻市営競馬運営協議会は三日午後一時から市議事堂で開き、夏競馬開催日どりを予定どおり二十七、二十八、(九月)一、三、四の土日各二日を含む六日間と決定、早速宣伝に着手することとなつた、出場馬は平地(急歩)二十八頭、速歩四十四頭の計七十二頭で山形、岩手、青森方面からも十二頭参加するが、馬券売上目標は五百万円

「存続か廃止かを決する!! 第二回市営競馬本極り」(『石巻日日新聞』8月14日)

石巻市営第二回競馬は既報の如く今月二十七、八日、三十一日、九月一、三、四日の計六日間開催される、この結果如何が石巻市営最後のものとなるか、或いは継続して開催するかの重大岐路に立つことになるため、関係者はかつてない緊張振りで種々の憶測をしている
 二十六年から始まつた市営競馬の成績を振りかえつて見ると、毎年次の決算尻は二十六年二万三三八五円、二十七年一万九八二〇円、二十八年十五万二五〇〇円と黒字が続き市当局を喜ばせていた、所が二十九年四月の第一回競馬が初日二日と雨で延期し不吉な感を抱かせていたのが当り、開催六日間の天候は雨雨雨曇雨曇と晴天一日もなしで終始した、このため見込んだ馬券の売上げはガタ落ちし、僅かの三四五万円に過ぎず更に三十九万円の大赤字が出る結果となつている、今年の第一回は幸い一千円何がしの黒字となつたが、ちょうど就任した山内市長の赤字克服財政再建策のあおりもあつて、「廃止」の声が上つた、しかし僅かでも黒字の出たのが好影響を与え第二回目の開催となつたものだ
このような情況下に、七月下旬市に入つた自治庁の財政再建文書は「競馬事業会計は二十九年度においては赤字となつているので、財政負担を軽減するため事業運営の合理化乃至存廃について検討すること」と将来の運営についての厳しい指さを与えている、そこで問題となるのは第二回の結果予想だが、1.一日の二百十日を中にはさみ天候が危まれる 2.端境期の農家に金はなく、水産関係者もサンマが始まらぬため金がないーなど期待薄しとする人が多く、これが適中すると馬券総売上目標五五〇万円にはとうてい達しようもなくなる訳、勿論関係者の市は一応「黒字の自信をもつているがやつて見なければわからぬ」とは言うものの大した強気が見られず、唯、1.開催日は東北六県下何処にも競馬はなく石巻だけ従つて県内外馬多数が出場しその馬についてくるプロも多く入る 2.馬券の売り上げは五〇〇万円にさえなれば赤字にはならぬー点に一縷の望みを抱いているようだ、仕方なくやるのだとの空気さえ感ぜられる市当局の態度にも増して、先頃の存廃論で市民の間にも昔日の人気はなくなつてきたようでどうやら今年で競馬も終りの感が強まつている
▼長川助役の話=自治庁からも言つて来ているし、この競馬が今後の存廃を決することになろう
▼佐藤農林課長の話=競馬法の目的第一条に地方財政の寄与がうたわれている、法には畜産振興も馬匹改良の文句も見えない、従つて赤字が出るならば当然廃止が予想される、願くば黒字になり、来年も継続してフアンの期待に応じたいところだが、黒字の自信はあつてもやつてみないとわからない

「縣外馬続々到着 前景気上々の市營競馬」(『石巻日日新聞』8月25日)

東北六県内何処にも催されない日を選定した今年第二回石巻競馬は二十七日から始まるが予想にたがわず二十二日から続々と県外馬が到着しこの分だと石巻に始めて来たと言う優秀馬も含めて県外馬が六〇頭、県内馬も合すると一三〇頭の出場は確実、石巻競馬始まつて以来の盛況が期待されるに至つた
ところが二十二日仙台福島の競馬場からどつと一度に二十頭が到着したため厩舎が不足、五頭が宿なしになつたところに二十三日も山形から十頭到着、慌てた佐藤農林課長の指示で俄か造りの厩舎建築が始まるなど関係者は嬉しい悲鳴をあげている
なお仙台、鳴子、古川、登米、栗原など都市や馬産地の宣伝は二十二日から始められニユースカーが出動二十四日で一応終了二十六日には従業員の予行演習をして万全を期している

「出場馬數が百四十頭」(『石巻日日新聞』8月27日)

既報、二十七日から開幕の石巻競馬に出場の岩手、青森、新潟、山形、福島五県からの県外馬三〇頭に到着、県内馬も百十頭が来て計百四十頭の馬体検査が行われた、空前の出場馬数となつた番組の編成は同日午後から開始されたが、初日の二十七日は午前九時より開場式、十時より二千米速歩から延六日間の幕を切つて落す、今回の競馬には初めての県外競走専門馬が来ているため意想外の大穴中穴の出る事が見込まれている、なおこの今年度第二回が明年の開催継続を左右するだけに天候が気づかわれている

「石卷市營競馬 賑やかにあす開幕」(『石卷新聞』8月27日)

三十年度第二回石巻市営競馬は明二十七日開幕、二十八、三十一、九月一、三、四の晴天六日間開催される。あす午前九時半から開場式を行い一日十二レースずつを挙行するが、今回の出場馬は百三十頭(うち県外馬三十頭)で、出馬頭数もグンと多いだけにレースの活況を予想されている。主催者側の市ではアルバイト男女百人をやとつてすでに準備万端をととのえたが、今回は他地の競馬とも全くカチ合わないので、天候さえよければ馬券売上げ目標五百万円を突破できると期待している

「出足もよい 石卷秋競馬」(『石卷新聞』8月28日)

石巻市営秋競馬はきよう開幕され午前十時からの開場式に続いて第一レース速歩の十五頭がスタートしたが、快晴に恵まれたため人出もよく、ザツと二千人が白一色に場内スタンドを埋めた、開催期間は二十八、三十一、九月一、三、四の六日間で県外馬三十頭を含め計百三十頭の出場だが、市ではこの調子なら馬券売上げ目標五百万円は突破できると期待している
【写真】第一レース速歩−ヒバリ野競馬場


「大穴続出に市營競馬賑う」(『石巻日日新聞』8月30日)

二十七日から開催された石巻競馬は初日約五千人が競馬場に詰め番組毎に一四〇頭全部出場の各レースで場内は興奮、第五レース一千米平地で三万八千四百五十円(一票)の大穴が出てウナらせ七十七万四千四百円の売上げをみせた、続く二日目の二十八日は折柄の強風にもめげず三千人のフアンが集り終り近くのレースで七千九百円と五千円の中穴が出て場内にどよめきが湧いていた
この日も馬券の売上げは好調で百八万二千二百円だつた
三日目は三十一日の送り盆から再開される

「大アナは三万円」(『石卷新聞』8月30日)

石巻市営秋競馬の前期二日間の馬券売上高の総売上高は初日(二十七日)七十七万四千四百円、二日目百八万二千二百円の計百八十五万六千六百円でこの調子なら目標五百万円は突破できそう−と市では語つている、なおレース中の大アナは初日の三万八千円だつた

「三日目も 馬券売上好調 悪天候心配なし主催側大喜び」(『石巻日日新聞』9月2日)

石巻競馬三日目の三十一日は前夜の強風と朝来の雨模様で客の出足と馬券売上げ減を心配されたが送り盆のため農家からのフアン多数来場この日だけで六十三万二千円の売上げとなり主催者をホツとさせている、レースも第一レースの十八頭を筆頭に出場馬が多く第八レース平地一二〇〇米で連勝式に一万一千八百十円の穴が三票出るなど好配当があつて益々後半のレースに期待されている、一日の四日目も比較的順調一三〇頭の馬が馬場を馳廻つている、なお三十一日までの三日間平均は一日八十万円を上廻る馬券売上げとなつている

「石卷競馬再開」(『石卷新聞』9月2日)

石巻市営秋競馬三日目の三十一日は朝からあいにくの雨にたたられ馬券売上高は計六十三万二千円に止まつたが、八レース(平地)一万一千八百十円と六レース(速歩)六千百円のアナが出た、なお初日から三日間の合計馬券売上高は二百四十八万八千六百円である

「きのうの競馬で 五万円のアナ」(『石卷新聞』9月3日)

石巻市営秋競馬四日目の一日は馬券売上百九万五千八百円で四日間の累計は三百六十一万四千百円となつた、同日は七レースに連勝で一人で五万二千四百八十円をせしめた大アナ幸運者が現われ、観衆をうらやましがらせたが、主催側では残る三、四の二日間天候さえよければ六百万円の売上げは期待でき、市営競馬はじまつて以来の好成績を記録しそうです−と明るい表情である

「石卷競馬」(『石卷新聞』9月4日)

石巻市営秋競馬の後半五日目を迎えた三日は第十一レース(県対抗特別速)に石巻市農協組合長賞が、また十二レース(特別平地)に同市長賞がそれぞれ副賞として賭けられた

「騎馬折り重なつて倒れ 伊藤騎手重態 顔面蹴られ五日目の御難」(『石巻日日新聞』9月4日)

市営競馬第五日目の三日正午ごろ、第三レース一、〇〇〇メートル平地競走で六騎が一斎にスタート、三〇〇メートル附近にさしかかつととき仙台市長町競馬場騎手伊藤勝正君(二一)の乗馬が前方で倒れた同じ出場場につまずいて馬上から落ち、つづいて後から疾走してきた騎馬が伊藤くんの上に押し重なつて倒れるという三重衝突がとつさの間に怒り、伊藤くんは顔面をヒズメで蹴られ人事不省に陥り、観衆は騒然、直ちに市内本町佐藤外科医院に収容された
佐藤医師の診断では顔面一帯の蹴られたあとに脳内血を併症して生命危篤、酸素吸入が四時間もつづいている

「騎手はついに死亡 石卷競馬場で三重轉倒」(『石卷新聞』9月6日)

石巻市営競馬五日目の三日正午ころ第三レースで発走馬三頭が折重つて転倒、死亡一、軽傷一を出す競馬場開設いらいの事故があり場内を騒がせた−この日第三レースの一千メートル急歩は予定より三十分おくれ正午過ぎスタート、六頭の出場馬が砂ジンをまき、馬首をそろえての好レースとなつたが、第二コーナから直線コースにさしかかつた際、トツプのミナミトキノヒオ号(遠藤騎手)が突然転倒したため、すぐ後を追い込みに入つた二位ハナニシキ号(伊藤騎手)続いて三位キオカゼ号(久保井騎手)と人馬もろとも三頭折重なつて転倒する騒ぎとなつた。この事故で二位の東京都品川区大井競馬内騎手伊藤勝正さん(二一)は頭部、顔面裂傷はじめ全身打撲の重傷を負い石巻市本町佐藤外科に収容されたが五日朝十時四十分ころ死亡した。第一位の遠藤晴治騎手−桃生町中津山−も頭部に全治二週間の打撲傷を負つた。満場騒然たるうちにレースは終つたが、このため本命馬の事故で単勝三千円の穴が出た。市農林課や石巻署で先頭馬転倒の原因を調べている

「競馬場に手落はない」
競馬出場騎手の死亡事故について出場側では「競馬場の手入れが悪いからだ」と主張しているが、これについて佐藤市農林課長は五日朝次のように語つた
◇佐藤農林課長談=市営競馬は農林省の許可を受けて開催したものであり、施設の悪いところもあろうが、今回の事故については騎手の技術面に原因があるのではなかろうか、万一の場合を考慮して開催前に競馬運営委員会にもはかつているので弔慰金は出すつもりだが、雇用関係に伴う補償は馬主との契約とりきめで行われると思う

「石巻初の事故 伊藤騎手死亡 市から弔慰金を贈る」(『石巻日日新聞』9月6日)

(既報)石巻競馬第五日目の三日十一時頃第三レース一〇〇〇米平地(きう歩)に出場疾走中第三コーナーに差しかかる直前(海岸よりパルプ側に差しかかる手前)転倒した馬につまずき自分の乗馬も転倒落馬、馬のひずめに上アゴから鼻にかけ蹴られ瀕死の重傷を負い、佐藤外科で手当を受けていた仙台市長町競馬場騎手伊藤勝正(二一)さんは遂に五日午前十時四十五分死亡した、主催者側の石巻市では長川助役が弔問、追つて各地の例を参考に弔慰金を贈る
過去九回を通じ始めて騎手死亡の事故となり石巻内外を驚かせている、今回の事故発生状況は八頭が一斉にスタート第二コーナー(海岸寄り)を廻ると先頭を切る二頭を追つてミナミトキノヒメ、ハナニシキ、キヨカゼ等が一団となつて激しいレースを展開、間もなく先頭が第三コーナーにかかると見るやまだカーブにかからなかつたミナミトキノヒメが前脚を折るようにつまずき転倒、乗つていた遠藤春造騎手が落馬した、すぐあとに続いた伊藤勝正騎手の乗るハナニシキとキヨカゼの頭がミナミトキノヒメにつまずいて折り重なり倒れ、キヨカゼは直ちに起き上り再び騎手を乗せてゴールに入つて六着となり、遠藤騎手も起き上つたが伊藤騎手とミナミトキノヒメが起き上らず、驚いた競馬関係者が自動車で走路を走るころ多数のフアンが現場に殺到した、この頃やつと脳震とうを起していたミナミトキノヒメが起上り高価な馬だけに馬主や関係者をホツとさせたが、此の種事故による騎手の死亡は最近山形県上の山でも発生して居り、市では他都市を例にして近く弔慰金を支出することにした

「石巻署現場 關係者取調」
(別項)石巻署では馬が転倒した箇所の詳細調査を行い、走路に手落ちがあつた場合主催者側代表の過失致死事件として調べを行うことになるらしい、これについて市当局は次の如く語つている
 佐藤農林課長の話ー走路に欠陥があればどの馬も転ぶ筈だがあの馬のみだつた、転倒の原因は馬と馬との接触と思われる

「馬券總売上げ 六百萬突破 市營競馬大成功」
今後の開催を左右する石巻市営の今年度第二回競馬は六日目最終日一六五万八千六百円の市営競馬過去九回の一日最高売上げ新記録を樹立しつつ、六日間合計六百四十二万八千円をあげて黒字が確定的なものとなり、明年の開催が約束された
この成功は東北六県内に石巻とカチあつた競馬開催地がなく一四〇頭の出場馬があつたのと、この馬についてきたフアンの多かつたこと、及予約供出制で農家が若干金廻りが良かつたことなどがあげられている

「死亡騎手に弔慰金三万円」(『石卷新聞』9月7日)

石巻市営競馬の事故で死亡した東京都品川区大井競馬内騎手伊藤勝正さん(二一)−仙台市諏訪−の遺族に対し、市では五日弔慰金三万円と馬の傷害手当一千円をそれぞれ山内市長から贈つたが、伊藤騎手入院中の費用や遺族の滞在費その他一さいの諸経費は市が負担することにきまつた、なお前後六日間の馬券売上高は計六百四十二万八千円で目標五百万円を大きく上回り、開設以来の好成績を記録した

「石巻初の 豊年競馬 秋深む十一月中旬頃に挙行」(『石巻日日新聞』9月17日)

六百数十万円の開始以来最高馬券売上げで石巻競馬関係者は大いに気を良くしているが、来る十一月中旬頃仙台競馬の終了を待ち、石巻初の花競馬「豊年競馬」が催されることに内定、石巻競馬会では早くも準備を開始した
この花競馬は通例の市営競馬とは全く異り開催日は一日限り、入場者は寄付の形で金を払うと投票券を受取る、この投票券で自分の予想する馬に投票してその馬が勝つと商品又は商品券を貰う、今度催される花競馬は石巻丸光百貨店が主催する予定と言われ、他にも商店会が希望していると競馬関係者は語つている、競馬は荷を積んだ車を輓く輓馬二、平地(きう歩)四、速歩(だく)四の計一〇レースで出場馬数は一〇〇頭を越すことが予想されている、なおこの競馬は趣旨は別だが二十八年夏花競馬をやつた事があつたものの三万八千円の赤字を出している其処で関係者が調べたところ県内では佐沼、県外では岩手県水沢在で四回、群馬、茨城両県でもスポンサーつきで成功していることが判り、石巻でも今年から催すことに決まつたものである

「市營競馬廃止の氣配濃厚となる」(『石巻日日新聞』10月18日)

市営石巻競馬は二十九年度の赤字で今三十年度の開催が危まれたが第一回はどうにかトントン第二回は二十二万円の黒字となつて関係者をホツとさせたものの二十六年来の実績累計は依然十七万円からの赤字が残つているため愈々今年度をもつて市営廃止の線が濃厚となつた、これは過般の自治庁指示が今後の開催可否について指さするところがあつたのが大きく当局首脳部に反映したものらしい、しかし第二回競馬が二十二万円の黒字を出したのに気を良くし明年の開催について全く疑問を持たなかつた当局外の関係者に与える影響には深刻なものとなるのをおそれ、最終の段階である「市営競馬開催条例」の廃止を議会に提出する迄には産業経済委員会や競馬委員会に諮つて意見をまとめる手段を講ずるものとみられる
 石巻に競馬が行われるようになつたのは二十三年からで二十五年迄は県営、二十六年からは市営になつて以後毎年開催されてきた、二十八年まではどうにか黒字が出ていたが二十九年春で十三万円、同年秋に三十八万七千円の赤字となり、好調だつた催しに暗影が生れた、今年に入つて市長改選もありどうにか頭初計画通り春秋二回催されて前記の如く二十二万円の黒字となつたが、結局差し引きすると十七万円からの赤字が残つた訳である

「不安定な石巻競馬は 存続か廢止の段階」(『石卷新聞』11月24日)

昭和二十六年から春秋二回ずつ開催されてきた石巻市営競馬はさる十月[註:正しくは八〜九月]の三十年度第二回競馬で計九回を催したが、毎回赤字が続くので今後の開催は市財政の現状ともニラミ合わせて“保留”状態となり、市は十一月中に市営競馬開催委員会を緊急召集、廃止か継続かをきめることとなつた市営競馬は(1)馬産奨励(2)地元振興という一石二鳥をねらつて昭和二十六年(この年は一回だけ)から毎年二回ずつ催してきたが、東北六県十二カ所で年三十六回も開催する他地の競馬とカチ合い、あるいは悪天候馬場施設不良と悪条件が重なり毎回よくて二ー三万円程度の“黒字”にとどまり、二十九年十月の秋競馬には三十八万円の赤字を出し一般会計から繰入れして補充する始末だつた。皮肉なことにこの十月催した秋競馬は恐らく“最終の市営競馬”といわれたのに反し馬券売上げ六百四十八万円、黒字二十万円という開催いらいの初の好成績となつたが、主催者側の市当局も「このような好成績は今後は期待できまい」と語つており、どうやら“廃止”に大勢は傾いたようである。ことしの秋競馬がこのような好成績となつてのは他地方の競馬と全然カチ合わなかつたことと好天候によるが、反面市首脳部の必死の赤字再建工作はこのような“不安定”競馬の継続を許さぬとみられており、両三日中に開く競馬委員会の決定いかんが注目されている

「石巻競馬の存廢 二十八日に票決」(『石卷新聞』11月25日)

(昨報)石巻市営競馬運営委員会は二十八日午後一時から市役所議事堂で開き、昭和三十年度第二回市営競馬開催成績の報告に続き、明年度運営について協議することとなつたが、赤字競馬に対する批判が高まつているので席上、存廃問題をとりあげ、これをどうするかについて票決を行う予定である

「市営競馬 存置に一致 結論は市会の態度に俟つ」(『石巻日日新聞』12月22日)

存廃をめぐつて注目されている市営競馬の運営委員会は既報の如く二十日午後石巻市役所に開かれたが、出席した人々は十六名の委員中最も競馬に関心の高い人々十六名だつただけに、「廃止」など全くカゲをひそめ、むしろ「年四回やれ」の発言があるなど存置論に終始した
委員会は先づ今年度第二回競馬の会計結果の報告に始まり、十九万五七二六円の黒字となつた旨の内容説明について異議なく承認、次いで明三十一度の運営に移つた、此処で出席者から俄然存置論が活発となり「仮に多少の赤字が出ても市の産業発展地方の馬産改良、仙台と県内僅か二ヵ所の石巻の名を内外に知らしめるなどから敢えて継続すべきだ」との主張の中に「利益をあげるのには年二回では駄目回数を多くすることによつて人も多く集り優秀馬も多数集つて人気が上り馬券の売上げも上昇して必然的に利益が上る、年四回にすべきだ」との発言があつて□つた、当局からはこの席での結論的意示表示は何等なく、諮問機関の委員会の経緯を傾聴していたが、いづれ議会の意向をたしかめて存廃の結論を出すことになる模様である

「廢止の危機にさらされた 石巻競馬は存続」(『石卷新聞』12月22日)

石巻市営競馬運営委員会は二十日午後二時から市役所第一議員室で開かれさる八月二十七、二十八、三十一と九月一、三、四の計六日間にわたり開催した本年度第二回市営競馬の結果報告と併せて“赤字競馬”の存廃意見を交換したがヒバリ野競馬施設にはすでに県の助成なども含めて百六十万円の金を投じており、また地方の年中行事でもあるので昭和二十六年から九回開催して約三十万円の赤字が出たからといつてすぐやめるテもない−という声が圧倒的に多く、結局この存廃は当分タナ上げされる公算大となつた。なお本年度第二回市営競馬開催成績は収入合計六百五十万一千百十円支出同六百三十万五千三百二十四円で差引残額(黒字)十九万五千七百八十六円となつているが、開催前後九回を通じての計算ではこの黒字分も含めてなお合計二十九万七千五百五十九円の赤字が残されている勘定である

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